研修医の記憶

病院での素敵な出来事を研修医視点で綴ります

祖父が亡くなった時の話

私の母方の祖父は、私が17歳の時に亡くなりました。死因は肝不全、なんでも私が小学生の時に一度余命1週間と言われていたそうで、長患い中の長患い。それ故に辛い思い出も多く、今でも思い出すと気分が暗くなる最期でした。 肝不全に至った原因はアルコール…

ベテラン先生の悩み

とある先生が、救急外来の合間に見せてくれた子供のCT。小さな頭に、絡み合うように何本もドレナージチューブが入っていました。 「この子な、歩けんのよ。」 自由奔放、一匹狼、そんな言葉がぴったりな先生で、怒ると怖いし笑う時は大声で笑う。その先生の…

お見送りの記憶 1

私が最初に見送った方は、研修開始時には既にあと1週間の命と言われていた心不全のおじいさんでした。 それまで私は目の前で人が死ぬのを見た事がなく、その人に死が迫っているという事実が理解できませんでした。 止まらない消化管出血、貧血も進行し、そろ…

脳外科前教授の最終講義

脳外科前教授は主に脳腫瘍の研究をされていた先生で、最終講義はその先生の研究を数十年にわたって振り返る、人と脳腫瘍の戦いの歴史ともいえるものでした。 現在も、脳腫瘍はほぼ完治の望めないがんの一つで、先生は、いわば戦の真っ最中に指揮官の座を降り…

学生の時の、先輩方の名言集

「働いて働いて、でも何人も救えずに見送って、ああもう死な人は見たくないと思って研究を始めるんだよ。」 (循環器内科前教授) 「僕はある時、何で病気になるまでほっとくんだろうと思った。僕たち医者の方がだよ。それで予防医学というものを考えた。」 (…

初心を忘れそうだから

研修医として働き始めて一年が経って、充実はしているけれども、忙しかったりしんどかったりで、初心を忘れそうになることがあります。 『一人でも悲しむ人を少なくしたい』 これが医学部を受験した理由、私の初心です。 私の祖父は肝臓癌で亡くなりました。…